【脱アマチュアクオリティ】効果的なインタビュー写真の撮影テクニック
インタビュー記事や対談記事に欠かせないのが、取材対象者の写真です。言葉にはできない取材対象者の人柄が伝わる他、読む人の共感を得るためにも、魅力ある写真を添えてインタビュー記事を掲載したいものです。今回は、インタビュー記事に適した写真について、撮影前の準備や、アングルなどのテクニック、そして質の高い写真がもたらす大きな効果について詳しく解説していきます。
もくじ
■インタビュー写真とは
基本はポートレート
インタビュー写真は、言うまでもなく人物をとらえた写真です。ただし、人物写真には2つのパターンがあり、1つがスナップ写真で、もう1つがポートレート写真です。ポートレートとは、肖像画や肖像写真という意味で、人物を写すことが目的となります。F値の明るいレンズや望遠レンズを使って背景をぼかして、人物を際立たせるように撮影するのが特徴です。一方のスナップ写真は「どこで撮ったのか」「誰と撮ったのか」が分かるように被写体と一緒に背景や周辺にあるモノや人と一緒に写すのが特徴です。旅先で背景に観光名所を入れて撮ったり、イベントなどで友達や知人と記念として撮ったりする写真もスナップ写真と言えるでしょう。そうした背景や周辺情報を極力省略して、被写体であるインタビュー対象者だけにフォーカスを当てるのが、インタビュー用ポートレート写真です。
インタビュー内容に応じてスナップ写真も活用
ポートレート写真だけではワンパターン化してしまう場合は、あえてスナップ写真を使った演出を加えるのも効果的です。例えば、インタビュー内で語っているモノや商品・サービスが分かるような使用シーンなどが挙げられます。また、取材現場のリアルな雰囲気や臨場感が伝わるようなカット、インタビュー後のオフショットとしてスナップ写真を活用するのも1つの工夫です。あくまでもインタビュー写真は取材対象者を被写体としたポートレート写真が基本ですから、写真点数が多い場合にアクセントとして加える程度に留めておきましょう。
商品・サービス理解を促す物撮り
ECサイトなどに掲載されている商品を撮影した物撮り写真も、インタビュー内容だけでは説明しきれないことを補完するために活用できます。デザインや雰囲気など、言葉だけでは説明しきれない・伝わらないインタビュー内容の場合は、情報を補完する意味で、形ある商品やサービスの写真を利用すると良いでしょう。見た目から情報をインプットした方が、コミュニケーションスピードが速くなるうえ、理解も深まります。形のない商材やサービスの場合は、利用シーンをイメージさせる写真や関連商品を物撮りして掲載するのも有効です。他にも、スケールの大きな物事について語っている場合や、逆に緻密なモノを説明する場合などには、対象物の大きさ・小ささが伝わるような比較物と並べた写真などを上手く利用できます。
■インタビュー形式に合った構図
ここからは、インタビュー写真の基本であるポートレート写真について、詳細に説明していきます。まず、インタビューには3つの形式があることを前提として理解しておく必要があります。(1)人と人が会話している様子を切り取る「対談形式」(2)取材を受けるインタビュイー本人が一人称で語る「モノローグ形式」(3)第三者が客観的に語る「ルポ形式」の3です。
対談形式の場合
対談するのは、「インビュイーとインタビュアー」のパターンもあれば、複数のインタビュイーが登場するパターンもあり、登場する人物の数によって変化を加えやすく、使い勝手も良い形式と言えます。取材対象者1人ひとりの表情や様子が伝わるよう、質問に答えている瞬間を切り取ったバストアップの構図で撮影するのが基本です。対談者が多い場合は、被写体となる対象者に目線を上げてもらって、相手がいる想定で語り掛け、手のしぐさや表情に工夫を加えることで臨場感が生まれます。インタビュアーの肩越しのカットなど、構図にも工夫しやすい点が特徴です。
モノローグ形式の場合
取材対象者であるインタビュイーの一人語りによる形式をモノローグと言います。この場合は、本人の人柄が伺えるようなインタビュー内容に応じた表情にフォーカスを当てるのが基本です。シリアスな話題であれば、まじめな表情や険しい表情、明るい話題であれば楽しそうな様子でインタビューに答えている様子をとらえたいところです。
ルポ形式の場合
第三者が語り、文章も「~~である。~~に違いない。~~だ」といった言い切り調になるのが、ルポ形式です。この場合は、ドキュメンタリータッチの文章や、新聞記事のような報道文章に近い体裁になるため、落ち着いたトーンの写真がマッチします。インタビューの話題に関連した写真も活用して、演出効果を高めるのがおすすめです。
■インタビュー写真の準備・流れ
ロケハンの重要性
インタビュー写真は、取材中の対象者の様子を撮影するのが基本ですが、どんな空間・場所で取材を行うのかをあらかじめ確認しておく「ロケハン」を実施しておきたいものです。室内であれば、飲食店のような間接照明がメインで暗い部屋よりも、白い壁と天井であるほうがベターです。写真で表現したい目的や原稿の意図にマッチしたロケ場所を確認しておきましょう。
すっきりとした背景が基本
インタビュー写真の失敗例として多いのが、余計なものが写り込んでしまうこと。せっかく被写体にフォーカスを当てたポートレート写真も、背景に扉や窓、柱が映り込んでしまうと撮り直しが必要になります。扉や窓がなくても、壁のパネルのつなぎ目や柱が映り込んでしまうケースがあるので、撮影のたびに何度もチェックしましょう。背景がうるさくて、どうしても写したくないものが写ってしまう場合は、顔や頭に重ならないようアングルを工夫してください。その場では気にならなくても、仕上がった写真を見て「頭に柱が突き刺さっているように見える」といった指摘が入るケースが多々あります。
写真の意図を対象者に伝える
どんな雰囲気や読後感をユーザーに伝えたいのかを、撮影対象者と共有することも重要です。取材中は和やかな雰囲気でも結構ですが、重い話題を扱うような場合は、明るすぎる表情ではインタビュー内容と写真がマッチしません。被写体となる対象者に、意図を踏まえた明確な指示を出すディレクション力が問われます。
顔の向きを左右反転させる
人間の顔は左右非対称であるため、左右の位置を変えたカットを撮影しておくのが無難です。また、一方向からの構図だけにならないよう、バランスよく撮影しましょう。逆に対談形式の場合は、あえて左右どちらかの方向だけのカットにして、あたかも対談者同士が向き合っているようなレイアウトにすることも可能です。仕上がりを予測して、構図にも工夫を加えましょう。
本人チェック
写り具合は本人にもチェックしてもらって、納得してもらうことが後の進行をスムーズにするコツです。撮って終わりではなく、いろんな人に見てもらって、客観的な視点から良いカットを選ぶようにしてください。
■プロとアマチュアの実力差
アマチュアには真似できない技術
ここまでは、アマチュアでもインタビューに相応しい写真が撮影できるよう、基本的なことを解説してきました。ですが、プロのフォトグラファーと同様のクオリティに仕上げることは、極めて難易度が高いと言えます。カメラは光学機器と呼ばれるように、光をコントロールする技術が求められ、プロとアマチュアではライティングテクニックに雲泥の差があります。知識はもちろん、ライティング機材も全く違うため、クオリティにこだわるならば、プロに依頼するのが無難です。演出を演出と感じさせないテクニックを持つのがプロの技術です。
機材への投資額が桁違い
あらゆる条件・環境に対応できる機材とテクニックが必要とされるため、レンズ・照明機材への投資額がアマチュアとは桁違いに高いのがプロのフォトグラファーです。また、撮影当日の天候によっては、アマチュアでは対応しきれないことが多々あります。もちろんプロは、そうした状況もふまえた上でミスがないように万全の準備をして撮影に挑みます。
ポージングのバリエーション
プロのモデルではなく、一般の人物を被写体とする場合は、ポージングを的確に指示する必要があります。ちょっとしたしぐさやポージングの違いで、写真の印象は大幅に変わります。バリエーション豊富なポージング知識を持っているのもプロのすごいところです。
相手をリラックスさせる巧みなテクニック
撮影現場では雰囲気づくりも重要です。シーンとした雰囲気では、被写体となる人物の表情も堅くなってしまいます。相手の素の表情を上手く引き出すテクニックも求められるのが撮影の難しい部分と言えるでしょう。
技術とセンスが求められるレタッチ
写真は撮影して終わりではありません。デジタル現像によって、彩度・明度・トーンバランスなどをレタッチしてこそ、質感に優れた人物写真へと仕上げることができます。ソフトさえあれば誰でもできる、とはいかないところがレタッチ作業の奥が深いところ。肌の質感やホワイトバランスの統一には、ちょっとしたセンスが求められます。
■まとめ
写真撮影には多種多様なテクニックがあり、知識、技術、機材、ロケーションなどいくつもの要素を踏まえた適切な判断力が求められます。プロのように仕上げることはできなくても、被写体を立体的に見せる被写界深度のコントロール、必要以上に陰影をつけない逆光を割けた位置取り、表情に変化をもたらすポージングの工夫など、現場の努力によって質の高い写真にすることは可能です。ぜひ、ひと手間かけて、魅力ある写真にしてください。